2026-03-01から1ヶ月間の記事一覧
死を初めて実感したのは、小学生のとき。火葬場で棺桶に釘を打ち、煙を眺め、骨壷に骨を入れる。この人はもう二度と戻らないんだと気づく。あの頃は、なぜか自分だけはこうならないと思っていた。 死に興味が湧き出したのは、中学生のとき。ミステリーで殺人…
友達とご飯に行ったり、誰かとデートを計画したとき、たまにこう聞かれる。「好きな食べ物は?」ラーメン、ハンバーグ、メロンパンと私の口は反射で答える。しかしこれは違う気がする。 相手が聞きたいのは「一緒に何食べる?」ではないのか。 それに気づい…
PayPayでお願いします、とレジでスマホを出す。表情筋の活動が最小限の店員が、無言でバーコードをスキャンする。やっぱりQR決済って便利だと思う。浸透し始めてからも、私はしばらく現金派だった。手続きが面倒だったのである。 お洒落な部下が職場で服の話…
眼鏡はエロい。かけてる時もエロい。外す瞬間が一番エロい。なんなら外したあとの枕元の眼鏡もエロい。そんなことを微塵も思わせないような医者が、眼鏡をくいっと上げて言った。 「治りません。怪我ではなく老化なので」 マジっすか、と二十歳を過ぎたばか…
インフルエンザが大流行したこの冬。電車の中でマスクをしている人の数が春の訪れを知らせる。クジ運が悪い私は他人からウイルスをプレゼントされやすい。誰に見せるでもないラウンド髭を隠すためにも、私はマスクをする。ゲイであるという自意識とメタファ…
早生まれは幼少期に不利だと言われる。戦争の食糧難を経験した祖父にしこたま食べさせられた3月生まれの私は、小学生の頃、クラスで一列に並ぶと後ろのほうだった。 サッカーではタックルすると相手をふっとばした。質量が大きいほうがエネルギーが大きいと…
ハッピーエンドはエンドではなくスタートだと思う。結ばれるまでではなく、結ばれてからが始まり。20代の私がそれに気づくには、だいぶ時間を要した。何人もの恋人を傷つけてきた気がする。 10年ほど前、年下の恋人がいた。 彼は料理が上手だった。週に何度…
デブといったらダイエット。ダイエットといったら自炊。自炊といったらスーパー。スーパーで買うのはバナナ。 夏に己の限界を突破し、歴代体重オリンピックで金メダルを獲った。満員電車の汗染みが、おねしょを干してる布団のよう。恥ずかしいのに隠せなくて…
最寄り駅の改札を通る前、いつも少しだけ視線を上げる。次の電車が来るまでに三分以上あれば、改札前のコンビニに寄る。 52番をふたつ。 右手でパー、左手でチョキを出しながら伝える。目の前に四角い箱がふたつ置かれる。どうも、と言うと同時にポケットへ…
仕事を終えて帰った部屋で、洗濯物の山が私におかえりと囁く。この週末に君たちを洗濯するタイミングは何度かあった。けれど私の指先が選んだのは、洗濯機のボタンではなく、パソコンに繋がれたマウス。ごめんね、選んであげられなくて。 「自分との約束には…
1日の中で一番嫌な音は、決まって目覚まし時計が奏でる。朝食よりも布団の中の時間を大切にしたい私は、毎朝出勤すると職場のデスクで朝食を摂る。PCの電源をオンにして、ログイン画面が表示される前に、コンビニの袋から買った物を出して、袋は自席のごみ箱…