その他
彼を嗅いだら、あの頃とは違う匂いがした。 ――関西に転勤になりました。メッセージをSNSに残して彼は遠くへ行った。お互いが20代のときに、何度か会った。その後は、流れてくる写真や動画で近況を見るだけだった。半年前にたまたま時間が会い、池袋で食事を…
世界に一つだけの花。毎日がスペシャル。人生は紙飛行機。 あなたは特別なんだよ。ひとりひとりが違っていていいんだよ。沢山の歌が伝える。つまり私は特別なのである。 盲点の窓、という言葉がある。自分は気づいていないが、他人は知っている自分。これま…
田舎の高校に通っていた私は自転車通学だった。片道1時間かけてペダルを漕ぐ。時々、帰り道の自販機で缶ジュースを買って、飲みながら帰っていた。自販機のラインナップの隅には、ハテナマークがあった。 なにがでるかはおたのしみ 指先が、ファンタとハテナ…
いつも突然だった。幼稚園の時は気づけば体操教室に通っていた。小学校にあがるとピアノと水泳を習っていた。どれもやりたいと言った記憶が無い。 父親は、サッカー部だった。小学3年生になると、サッカークラブに入団できる。水泳かサッカーの2択を迫られた…
ピーマンが美味しい。生ビールが身体に沁みる。他人の成長に感動する。 サウナでととのう。私は未だに理解できていない。銭湯で理解できるのは、男の身体のよさだけである。 幼少期から、自然とソレを目で追っていた。プールの着替え中。銭湯。芸人が脱ぐバ…
子供の頃、友人から貰うお土産で一番困ったのは、キーホルダーだった。趣味が合わなくても、貰ったからには付けなければ失礼な気がして、学生時代の私の鞄には百鬼夜行がぶら下がっていた。違和感があっても時間が経てば愛着が沸くと信じていた。私は、高校…
小学6年の担任は、毎朝必ず出席番号順に呼名をしていた。学校の出席番号順は誕生日順で、私は大体最後のほうだった。自分が呼ばれるまで、名前を追っていく。半年も経つと、クラス全員の名前と順番を覚えていた。人の誕生日だけは、よく覚えていた。 高校で…
「あなたはパラディンなの」網の上のカルビをひっくり返しながら、女は言った。私は黙って話の続きを待つ。「パラディンはみんなの盾になって攻撃から守るの。元は武闘家だから、戦士みたいに武器は持たないの。そうして傷ついたら、自分の周りに壁をつくっ…
夏は海とプールの季節。小麦色の肌ではしゃぐ若者たちは、全身で夏を満喫しているなと思う。それを横目に、私は日焼け止めを全身に塗りたくる。色白で、日焼けすると黒くならずに赤くなる。 部屋の引き出しにはTシャツがそれなりにあるが、殆ど白いシャツで…
中学では、理科を教えていた。社会人採用枠の試験は、論文と面接だけだった。本採用ではなく臨時採用だった。臨時採用は本採用の配属が決まったあと、空いた枠に配属される。そのため配属の決定が遅い。そもそも決まる保証もない。 声がかかったのは、桜が咲…
違うんだよなぁ。煙を吸う。 私が書きたいことって、こういうことなのかな。最近の文章は気取ったエッセイみたいで、なんだか気恥ずかしい。もっとこう、頭からっぽにして笑えるものを書きたい。煙を吐く。 ふと思い立ってChatGPTにこれまでのブログ記事を読…
死を初めて実感したのは、小学生のとき。火葬場で棺桶に釘を打ち、煙を眺め、骨壷に骨を入れる。この人はもう二度と戻らないんだと気づく。あの頃は、なぜか自分だけはこうならないと思っていた。 死に興味が湧き出したのは、中学生のとき。ミステリーで殺人…
PayPayでお願いします、とレジでスマホを出す。表情筋の活動が最小限の店員が、無言でバーコードをスキャンする。やっぱりQR決済って便利だと思う。浸透し始めてからも、私はしばらく現金派だった。手続きが面倒だったのである。 お洒落な部下が職場で服の話…
眼鏡はエロい。かけてる時もエロい。外す瞬間が一番エロい。なんなら外したあとの枕元の眼鏡もエロい。そんなことを微塵も思わせないような医者が、眼鏡をくいっと上げて言った。 「治りません。怪我ではなく老化なので」 マジっすか、と二十歳を過ぎたばか…
インフルエンザが大流行したこの冬。電車の中でマスクをしている人の数が春の訪れを知らせる。クジ運が悪い私は他人からウイルスをプレゼントされやすい。誰に見せるでもないラウンド髭を隠すためにも、私はマスクをする。ゲイであるという自意識とメタファ…
早生まれは幼少期に不利だと言われる。戦争の食糧難を経験した祖父にしこたま食べさせられた3月生まれの私は、小学生の頃、クラスで一列に並ぶと後ろのほうだった。 サッカーではタックルすると相手をふっとばした。質量が大きいほうがエネルギーが大きいと…
ハッピーエンドはエンドではなくスタートだと思う。結ばれるまでではなく、結ばれてからが始まり。20代の私がそれに気づくには、だいぶ時間を要した。何人もの恋人を傷つけてきた気がする。 10年ほど前、年下の恋人がいた。 彼は料理が上手だった。週に何度…
デブといったらダイエット。ダイエットといったら自炊。自炊といったらスーパー。スーパーで買うのはバナナ。 夏に己の限界を突破し、歴代体重オリンピックで金メダルを獲った。満員電車の汗染みが、おねしょを干してる布団のよう。恥ずかしいのに隠せなくて…
最寄り駅の改札を通る前、いつも少しだけ視線を上げる。次の電車が来るまでに三分以上あれば、改札前のコンビニに寄る。 52番をふたつ。 右手でパー、左手でチョキを出しながら伝える。目の前に四角い箱がふたつ置かれる。どうも、と言うと同時にポケットへ…
1日の中で一番嫌な音は、決まって目覚まし時計が奏でる。朝食よりも布団の中の時間を大切にしたい私は、毎朝出勤すると職場のデスクで朝食を摂る。PCの電源をオンにして、ログイン画面が表示される前に、コンビニの袋から買った物を出して、袋は自席のごみ箱…
コンビニのクーポンで缶チューハイが無料で貰えたのだが私は滅多なことでは家で飲酒をしない。今夜は、冷蔵庫に眠っていた2つのうち1つを取り出した。小気味よい音を立てた缶に、口をつける。4%のアルコールとマスカットの香りが、私の感覚を徐々に揺らし…
-----前回のあらすじ----- 誰ともセックスをせずに2年が経過した私。これではいけない、と良くわからない焦燥感に苛まされながら、ウリ専を予約するも神様の悪戯により失敗に終わる。果報とセックスは寝て待てと言い聞かせ自制心と仲良くしながら、ふと昔の…
この春から職場の責任者が変わり、色々なことが目まぐるしく動いていった。 前の責任者は良くも悪くも空気のようで変化を嫌う人だったが、新しく就任したその人はビックリするほど頭の回転が早く、物事を即座に判断する。これまで停滞していたことが動き出し…
出会い系を使ってゲイと初めて出会ったのは、大学1年生の時だった。 高校時代は携帯電話を持っていなかったので、今や廃刊になってしまったゲイ雑誌や、ゲイの個人ホームページだけがゲイの知識であり、東京には色々あるんだなと思いながらも、私は北海道で…
ここ数ヶ月、毎日夜遅くまで仕事をしている。21時を過ぎても「まだ21時か」となり、23時を過ぎた頃に「そろそろ帰る準備をしないと」と私の感覚は麻痺してきている。コロナがどうした、リモートワークなぞクソくらえ、という職場であり、ブラックな職場だと…
仕事の話。 毎月定額で月に10回まで整体をしてもらえるというプランが近所の整骨院にあり、1月頃から週2回ほど整骨院で整体を施してもらっている。ここ2週間は毎日筋トレをしているにも関わらず時折腰が痛むので、どういうことなのかと自分の身体に問いただ…
職場の話。 私は現在、大学で派遣職員として勤務している。とはいえ、大学との契約が派遣というだけで、別の会社(ここでは本社と記述する)の正社員である。大学内の業務を業務委託として請負うために、派遣職員という形で所属し、業務の分析を行い、提案し、…
弟の話。 年末年始に特に予定は無く、一人で紅白を観るのもなんだか味気無いなと思い、仕事を納めてから割とすぐに、実家に帰ることにした。母に訊いたところによると、年が明けてからは、弟家族も妹家族も実家に集合するとのこと。家族、という表現をしたが…
弟の話。 「今度東京に行くんだけど よかったらご飯でも食べない?」 弟から連絡が来て衝撃が走った。 弟と二人でご飯を食べる。 それだけ聞けば大したことないと思われるかもしれないが私にとっては一大事だった。 なにせ弟とは普段全く連絡をとらず二人だ…