ゲイがつらつらと書くブログ。

セクショナリズムとアンチテーゼ

とても良い天気である。

GWに山登りをするために
友人は電車に乗っていた。

 

久しぶりの非日常な世界に
私は幾分興奮していた。
行く前は腰が重いけれど
いざ行くとなんだかんだ楽しめる。

Twitterとか見てるとさ
 色んな人がドコ行ったココ行ったって
 やっぱりなんだか羨ましいんだよね」

殆ど旅行に行かない私は本音を漏らす。
行けばいいと思われるかもしれないが
行く友達も行きたい場所も思いつかない。

友人は「そうだよね」と言った後、
「たしかに、何人かで旅行って
 楽しそうだし、いいよね」
と続けたが、私は疑問を感じていた。

「そういえば、よく旅行とか行くけど
 大抵1人か2人で行ってるよね?」

そうなのだ。
友人は私と違ってよく旅行に行く。
1人で行ったり、彼氏と2人で行ったり。
何人かで行った話を聞いたことがない。

「思ったんだけどさ」

友人はポツリポツリと話し始めた。

 

「何人かで行く旅行とかってさ
 基本的に仲の良い友達と行くじゃん。
 例えばそこにあまり知らない人がいたら
 気も遣うし楽しめないこともあるよね」

「すごく、わかる」

花見とか、飲み会とか、
全員が友達なら良いのだけれど
知らない人が1人混じっているだけで
なんだか自分の居場所が
不安定でフラフラしているような感覚。

半分以上知らない人だった場合は
もはや合コンだよねコレは、と思う。

「なんか、ある程度仲良くなると
 仲良しグループみたいなのが
 できたりするじゃん」

「できるね」

「それで、そういうグループって
 他を寄せ付けない感じの空気になって
 独自の色に染まっていくんだよ」

「それ、なんとなくわかる。
 すごい楽しそうだなと思うし
 この人たちと一緒に楽しみたいなとか
 思うこともあるんだけど、
 絶対入れないし入れさせないよって
 圧力みたいなものを感じたりもする」

「入れさせないとかは
 無いと思うんだけどね」

私の表現が下手だったせいか
友人は笑った。

 

「でさ、俺はそういう風に
 染まりたくないなって思うわけ」

 

私と友人は、人間性は大きく違うけれど
どちらも一匹狼である。

私はそもそも友達自体が少ないし
ここ何年か仕事が多忙で誘いを断ってたら
いつしか声がかからなくなってしまった。

20代でよくつるんでいた友達は
それぞれ別の道を歩んでいる。
ここ最近そのうちの1人と偶然再会したが
それはまた別の話。

 

かくいう友人には友達はちらほらいて
自宅で何人か集めてゲームしたりしている。

「けどほら、家に集まって
 なんか遊んだりしてなかったっけ?」
私は疑問を口にした。
結局はグループに所属してない?

「あれは同じ趣味の人が集まって
 ただゲームをしているだけであって
 一緒に旅行に行くとか
 他の場面で会うことはない」

「そうなんだ」

「それにさ」

「うん」

 

「やっぱり一人は寂しいから
 染まりたくはないけど
 どこかのグループには居たいっていう
 そういう気持ちもあるんだ」

 

「そうなの?」
友人は1人で生きていけるだろうと
勝手に思っていたので少し驚いた。

集団に対しての帰属意識
持ちあわせているけれども
強い同族意識には賛成できないのは
共感できるところはある。

私は染まるのも悪くないと思っているし
どこかに所属できたらいいなと思う。
染めてくれる人達がいるなら
何色でもいいからお願いします
と、ここで主張したい。

もう30代も半ばの私にとっては
1人で新しいグループを作り
一から染め上げるのは相当疲れるし
染めるのは白髪だけで充分である。

 

「だけど俺には難しい」
友人は、かぶりを振った。

「そうかな?
 入ろうと思えば入れるんじゃない?」

「たぶんね。
 でも入ったあとが大変だから」

「大変なんだ?
 恋愛沙汰でトラブルとか?」

「そういうのもあるかもしれないけど
 そういうグループに所属するとさ
 色々な付き合いが発生するわけ。
 毎週のように会って飲んだりして
 やれ誰々の誕生日だ、お祝いだ、
 花見だプールだクリスマスだ、って」

「うん」

「そんなに沢山付き合いきれないし
 行かなかったら行かなかったで
 後ろ指をさす人も必ず出てきて
 ギクシャクしたりするんだよ」

まして自分の性格だから
相性の悪い人と必ず喧嘩になる
と友人は言った。

「難しいところだね」

 

得てしてそういうグループというのは
プライベートについて共有をする。

友人は自身のことについて話すのは
あまり好まないので、
隠し事ナシだよ、みたいなノリが
見えた瞬間グループを脱退しそうである。

「かといってどこかのグループに
 時々入ってしまうこともできるけど
 いざ入っても居るだけになる」

「たしかにね。
 自分が知らない話題で盛り上がられたら
 なんだか寂しいし、かといって
 自分がいるせいで話題を選ばれるのも
 なんだか申し訳ない気持ちになるなぁ」

「結局さ、自分が無駄だと思ってる
 飲み会だったり付き合いだったり
 そういうのって
 グループに居続けるための
 必要経費なんだな、と思ったんだよ」

 

 

必要経費。

 

 

なんだかその言葉に妙にリアルさを感じて
背筋がゾゾゾっとした。

 

お酒が好きで集まって飲む人達にとっては
それが目的なので経費とは思わないが
友人のように飲むのが好きでなければ
飲み会の集まりは不要な出費でしかない。

 

なんだか職場の飲み会に似ている。

私はお酒があまり飲めないので
職場の飲み会は完全に付き合いである。

お酒を楽しむこともないし
腹を割って話すこともない。
恋愛とか結婚の話は振らないで欲しいし
まぁタイミングがあればぁ~
とか、そんなことを適当に答える。

それに引き換え、友人ときたら
職場の飲み会にも一切行かないのである。

 

「俺は、したくないと思ったことは
 できるだけやりたくないし
 我慢とかもしたくないから
 やっぱり仲良しグループみたいなのは
 向いてないんだと思う」

「たしかに、向いてないかもね」

「でも、何かのグループには居たいから
 ゲーム以外では集まらない
 あのグループの中には入っているわけ」

「そういうことなんだね」

 

あ。

 

ひとつ思いついた。

 

「2人でグループを作ってみようか。
 そういう面倒な付き合いが無いやつ」

「提案としてはいいけど…」

「けど?」

 

 

「この2人に入れそうな人、誰か居る?」

 

 …

 

 

 ……

 

 

「…居ないね」

「そうだね」

私と友人は隣り合って笑った。

 

 

居ないけど。

 

 

居ないほうがいいかな。

 

 

もし居たとしたら
きっと今の2人の関係では
なくなってしまうような気がして。

 

 

 

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