いつも突然だった。
幼稚園の時は気づけば体操教室に通っていた。
小学校にあがるとピアノと水泳を習っていた。
どれもやりたいと言った記憶が無い。
父親は、サッカー部だった。
小学3年生になると、サッカークラブに入団できる。
水泳かサッカーの2択を迫られた。
私は水泳を選ばなかった。
友達の母親が英語教室をやっていた。
放課後に何も無いのは、金曜と日曜だけになった。
学校の休み時間は、女の子と絵を描いていた。
週に2日は、絵を描く日になった。
たいいく係、いきもの係、ほけん係。
誰かが何かの役割を担う。
私が立候補したのは、おぼん係だった。
給食のおぼんだけは生徒が手洗いをする。
通常は日直の仕事だが、私は担任に新しい係として提案した。
おぼんをあらうかかりがやりたいです。
担任は、いいよと言った。
私はひとり、おぼん係になった。
放課後、毎日全員のおぼんをひとりで洗った。
夏は冷たい。冬も冷たい。
水だと油は落ちにくい。
それでも、時間をかけてひとつずつ洗う。
水だと泡切れが悪い。
それでも、時間をかけてひとつずつすすぐ。
必要なこと。
やらないとみんながこまること。
サッカーに行かない理由になること。
丁寧に。
丁寧に。
時間をかけて。
汚れをひとつずつ流していく。
丁寧に。
ひとつずつ拭いていく。
ひとつずつ重ねていく。
誰も居ない教室の時計を見る。
まだ早い。
重ねたおぼんに汚れが無いか確かめる。
ついていない。
手に、泡だけが残っている。
すぐに、泥だらけになる。
泥のついた手では、自由帳はさわれない。
まだ、早い。
帰り道はゆっくり歩く。
向かいから、自転車が近づいてくる。
いま、かえりなの?
うん、あとからいくね
泡は、風に飛ばされていた。
屋根まで届いたのか、わからなかった。