ゲイがつらつらと書くブログ。

立ち漕ぎをやめた日

田舎の高校に通っていた私は自転車通学だった。
片道1時間かけてペダルを漕ぐ。
時々、帰り道の自販機で缶ジュースを買って、飲みながら帰っていた。
自販機のラインナップの隅には、ハテナマークがあった。

なにがでるかはおたのしみ

指先が、ファンタとハテナマークの間を何往復かしたあと、ハテナの誘惑に負ける。
出てきたブラックコーヒーを苦い顔で飲む。
途中のゴミ箱に空き缶を捨てて、立ち漕ぎで坂道を登っていた。

 

 

気づけば、彼を目で追っていた。
楽しそうな声は、うなじのあたりで疼いた。
指先が、彼とのメッセージ履歴をスクロールしていた。
何を考えているかは、わからなかった。

みんなでバイバイをしたあと、時々途中まで二人きりになった。
仕事。音楽。誰かの悪口。
分かれ道まで、ゆっくり歩いた。
ブラックコーヒーの味は覚えたけれど、肝心なことは聞けなかった。

その日も二人きりになった。
私は辺りを見回してから彼に言った。

チュー、しよっか

帰りの電車の中でも、彼の温度は残っていた。

 

 

夜の風が襟足を冷やす。
並んだ二人は白い吹き出しに言葉を載せる。
私は息を止める。

 

好きな人とか、いるの?

 

もう少しで分かれ道になる。
真顔になった彼は、小さく笑った。

 

付き合ってる人が、いるよ。

 

そっか。
溜め息と一緒に吐いた。

 

キミにも、いるよね。

 

彼の口元は笑っていた。

 


この日。
分かれ道で、分かれなかった。

 


ビールを2本買った。

 


自販機にハテナはなかった。

 

 

 

     

ブログランキング・にほんブログ村へ