茶道部がマラソンでいつも以上にパワーを使うように、人見知りは人と会うのに相当のパワーを使う。
出会い系アプリの「こんにちは」で手に汗をかく。
「会いましょう」なんて日には、待ち合わせ場所まで全身から汁が吹き出る。
そんな私が一滴も体液を出さずに会える友人は言った。
「お昼ご飯食べて、遊んで、夕飯も食べることってある?」
唸りながら脳みそにある箪笥の引き出しを漁る。
昼食を人と食べた記憶は奥のほうでカビが生えかけていた。
「ある」
腐りかけであることは伏せておいた。
「僕は全然無くてさ」
友人は言った。
「僕と一緒にいると相手を疲れさせてしまうんじゃないかと思って」
少し喉の奥に引っかかったような物言いだった。
「だから僕から解散するような雰囲気を出してしまう」
ご飯を食べて街中をブラブラする。
夕方近くになった時に、そろそろ時間だねと言う。
夕飯はどうするの?と聞く。
自宅の近くで食べようかな、と相手は言う。
それじゃあ、と言って相手は離れていく。
バイバイ、と胸元で軽く手を振る。
「なんだか、寂しいね」
「寂しいよ」
友人はまっすぐ私を見た。
「自分もそういうときあるよね」
「その時も寂しい気持ちになってるよ」
私は目を逸らして、部屋に舞う埃を数えた。
西日が差し込んでいる。
「今度はさ」
私は言う。
「お昼たべて夜もたべようね」